「地域エッジクラウド」で漏えいリスクとコストの低減を実現!
超高精細デジタル絵画配信で地方創生を推進
地域の価値ある文化芸術のデジタル化とその活用を通じた地方創生をめざして、2020年12月に設立された株式会社NTT ArtTechnology。主力事業であるオンラインデジタル絵画サービス「ArtTechView」の配信サーバーが、EOL(End Of Life/サポート終了)を迎えるにあたり、システムの一部入れ替えを実施。NTT東日本のプライベートクラウド「地域エッジクラウド」を採用し、オンプレミスからプライベートクラウドへ環境を移行しました。その結果、貴重な画像データの漏えいを防ぐセキュアな環境を手頃な価格で構築し、サービス提供価格の値下げも実現しています。「地域エッジクラウド」を選んだ理由や今後の展望について、株式会社NTT ArtTechnologyの担当者にうかがいました。
【目次】
株式会社NTT ArtTechnology
ソリューション導入効果
- 高精細なデジタルデータを配信する上での情報セキュリティ水準を維持することができた
- システムの導入・運用コストを削減でき、お客さまへのサービス提供価格を低減できた
NTT東日本選定のポイント
- 所在が明確で堅牢性の高いNTT東日本データセンターにデータを格納できること
- 高セキュアで高速なプライベートクラウドを手頃な値段で提供していたこと
- ポータル画面でシステムの稼働状況を確認でき、効率的な保守運用ができること
身近な場所で新たな芸術鑑賞体験を提供したい!
求めたのは圧倒的にセキュアな環境
――事業内容について教えてください。
黒川氏:株式会社NTT ArtTechnologyは、地域が持つ有形・無形の文化芸術のデジタル化と活用を通じて、地方創生に貢献するために2020年12月に設立した会社です。現在、大きく2つの事業を展開しています。
一つはデジタルアート推進事業です。主力サービスは、2021年10月より展開している「ArtTechView(アートテックヴュー)」。これは浮世絵や西洋絵画を高精細にデジタル化し、ネットワークを通じて4Kモニターに配信するオンラインデジタル絵画サービスです。美術館や博物館に足を運ばなくても、介護福祉施設や病院、オフィス、学校など身近な場所での芸術鑑賞を可能にします。
ほかにも自治体と協力して地域にゆかりの深い作家の作品をデジタル化し、地元の博物館に展示したり、全国各地をネットワークで結んで遠隔演奏をする音楽会を開催したりしています。身近な環境の中で文化芸術に触れる機会をつくり、地域と都市、世界をつなぐこうした取り組みを、我々は「分散型デジタルミュージアム構想」と呼んでいます。
もう一つの事業が、メディア・アートを紹介する文化施設、NTTインターコミュニケーション・センター(以下ICC)の運営です。展覧会やイベントを随時開催するほか、「分散型デジタルミュージアム構想」におけるヘッドミュージアム(本館)にも位置付けています。
――今回、NTT東日本に「ArtTechView」のコンテンツ配信システムの環境構築を依頼されました。この背景を教えてください。
黒川氏:「ArtTechView」のコンテンツ配信システムは、オンプレミスで運用していましたが、サーバーがEOL(End Of Life/サポート終了)を迎えるにあたり、システムの見直しが必要になりました。しかし、再びオンプレミスで環境を構築すると、初期費用が数千万円かかり、運用コストも高くなります。一方、パブリッククラウドは、コストは抑えられるものの、情報セキュリティ強度に懸念がありました。コストと情報セキュリティのバランスを模索する中で、NTT東日本に相談したのです。
――最終的にNTT東日本が提案した「地域エッジクラウド」を採用した決め手は何だったのでしょうか。
黒川氏:最大の決め手は、高い情報セキュリティです。私たちが配信する画像データは、協業パートナーである株式会社アルステクネが保有する特許技術、三次元質感画像処理技術(DTIP)によって、作品の持つ質感や色合い、筆さばきを限りなく忠実に再現した、所蔵元の学芸員の方も本物と見間違うほどの超高精細なデジタルリマスターデータです。所蔵元からも公式に認定されたものですから、万が一流出してしまうと、意図しないレプリカや贋作が生まれかねません。漏えいリスクには万全の対策をとる必要がありました。
その点、「地域エッジクラウド」はプライベートクラウドで、データの所在地はNTT東日本の国内データセンターと明確、建物の堅牢性にも信頼がおけました。情報セキュリティポリシーなども確認した結果、安心安全にデータ管理ができると確信できたので、採用を決めました。
同時にコストも魅力でした。オンプレミス環境に比べて、初期費用や運用コストを抑えられるのはもちろん、他社のクラウドサービスと比較しても価格が手頃で、情報セキュリティとコストのバランスに優れていました。
環境構築後は、システムのブラックスボックス化を可能な限りなくし、できるだけ自分たちで運用管理をしていきたかったので、ブラウザのポータル画面から仮想マシンの稼働状態を確認できることも評価しました。トラブル時にも効率的な保守運用ができると考えたからです。
担当課長 黒川 圭二氏
株式会社NTT ArtTechnology
主査 戸高 功資氏
株式会社NTT ArtTechnology
林 健太郎氏
一筋縄ではいかないオンプレミスからクラウドへの移行
提案から約5カ月の短納期で環境構築を完遂!
――導入まではスムーズでしたか?
林氏:「地域エッジクラウド」の基盤には、Microsoft Azure Stack Hubが採用されており、同様の操作性で利用できるのが特徴ですが、私たちはその機能を知らない状態からのスタート。Microsoftのホームページを見るだけでは仕様を理解できないところもありましたが、NTT東日本が必要に応じてオンライン打ち合わせを開催してくれたので、コロナ禍でもスムーズに理解を進められました。打ち合わせはアドホックで開催してくれて、週に2~3回は実施していたと思います。
検討すべき課題も次々に出てきました。たとえば、ネットワークは既設のセキュアな閉域網「フレッツ・VPN プライオ」を利用したのですが、そのままではアップデートや時刻取得ができません。また、SQLサーバーのライセンスの捉え方がオンプレミスとクラウドで異なり、そのままライセンスを持ち込めないという事態も発生しました。こうした課題に対してもICCに来て既存の回線で検証したり、Microsoftに問い合わせたりしながら、一つずつ丁寧に解決してくれました。
戸高氏:検討課題が多かったので、スケジュールはかなりギリギリで、工事開始直前まで課題をつぶしていたと思います。打ち合わせを始めてから環境構築完了まで約5カ月という、かなりのスピード感でしたが、きっちり対応してもらえて助かりました。
今回、システム入れ替えに伴い、配信用のアプリケーションも全面的にリニューアルしています。そのせいか、クラウド環境構築後にアプリケーション側でネットワークの問題が発生することもあったのですが、NTT東日本はその解決もサポートしてくれ、最終的にサービスが使える状態になるまで支援してくれました。おかげで予定どおり、システムの更改が完了し、年内に新サービスの開始までこぎつけることができました。具体的には、これまで葛飾北斎『冨嶽三十六景』(山梨県立博物館所蔵)と歌川廣重『東海道五拾三次』(大阪浮世絵美術館所蔵)の浮世絵を配信する「日本画プラン」のみだったところに、2022年12月よりオルセー美術館所蔵のゴッホやモネなど印象派の絵画を配信する「西洋絵画プラン」も加えたのです。
クラウドサービス担当 甘利 喜宣
NTT東日本 ビジネス開発本部
クラウドサービス担当 長山 剛大
コスト低減分はサービス値下げで利用者に還元
「地域エッジクラウド」で理想のサービス基盤が完成
――導入後の状況はいかがでしょうか?
林氏:トラブルなく、安定して使えています。運用においても、自分たちでポータル画面から仮想マシンのCPU使用率を確認でき、正常に稼働しているかを監視できるので安心感があります。情報セキュリティポリシー等との兼ね合いにはなりますが、今後、仮想マシン上で動く配信アプリケーションの動作状況の確認やリモートからの監視も可能になれば、さらに利便性が向上すると思います。
黒川氏:オンプレミス同様の情報セキュリティを担保しつつコストを下げる、という一番理想的な形を実現することができ、満足しています。オンプレミスに比べて運用コストを大幅に下げられたので、サービスの提供価格にも還元でき、レンタルプランについては月額約10万円から8万円へと値下げしました。
――今後の展望をお聞かせください。
戸高氏:まず、「ArtTechView」で配信する作品数を今後も増やしていきます。さらに、今後は絵画に限定せず、音楽や能・狂言など動画系のコンテンツ配信、インタラクティブなプロジェクションマッピングといった体験型のコンテンツなども拡充していきたいと考えています。デジタル化によって鑑賞の機会を増やすだけでなく、体験の質の向上も図っていきたいです。
「地域エッジクラウド」は、インフラなので、使い勝手の良し悪しの実感を得にくいサービスではあるのですが、安定して使えていることに勝るものはないと思っています。強固な情報セキュリティで貴重なデータを守り、安心安全・高速なネットワークで配信するのは、私たちが提供できる価値でもあります。今後も地域の文化芸術の魅力を発信して地方創生を推進していくために、さまざまな領域で「地域エッジクラウド」を活用していきたいと思います。
浮世絵は、原画の色彩に加え、和紙の繊維や版木の木目といった質感まで再現
*Microsoft Azureは、米国Microsoft Corporationおよびその関連会社の商標です。
*上記ソリューション導入時期は2022年12月です。
*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2023年1月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。
企業名 | 株式会社NTT ArtTechnology |
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概要 | 株式会社NTT ArtTechnology は、NTTグループの中において、文化芸術分野に特化した会社として2020年12月に誕生しました。デジタルアート推進事業として、ICTを活用した文化財のデジタル化や新たな文化芸術鑑賞方法の提案をしています。2022年に開館25周年を迎えた文化施設「NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]」の運営も担い、メディアを用いた作品を中心とした展覧会やオンラインでの活動を展開しています。 |